万葉集の好きな歌 (巻第十三) 作者未詳 長歌(三)

高畑耕治

2018年02月04日 09:45

万葉集 巻第十三 相聞 作者未詳 長歌 3289 初二句略

蓮葉(はちすば)に 溜まれる水の ゆくへなみ 我(わ)がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を ない寝そと 母聞こせども 吾(あ)が心 清すみの池の 池の底 吾(あ)れは忘れじ ただに逢ふまでに

(訳)
蓮の葉の水玉のように、行方にとまどっていた私、どこからか告げられた逢う運命なのだという心の声にお逢いしたあなた、なのに寝てはいけないと母は言うけれど、私の心は、清く澄んでいる池、その心の底からあなたを思い、忘れることなんてありません。もう一度逢えるその時まで。

反歌 3290
いにしへの神の時より逢ひけらし今の心も常(つね)忘らえず
(訳)
とおいむかしの、神さまの時代から二人はめぐり逢っていたのでしょう。今もいつも、あなたを忘れることはできません。

こんなに美しい歌が伝えられていることに心洗われます。

(参照)
伊藤博校注「新版万葉集(三)」角川ソフィア文庫
この文庫本は、歌の花束としての万葉集の捉え方に教えられます。
訳はすこし古風であっても歌心・感動を伝えてくれています。
井手至、毛利守「新校注萬葉集・和泉書院」西本願寺本・万葉仮名原文と詠み
中西進「校訂萬葉集」角川書店。題詞の漢文を訓読



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