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高畑耕治
高畑耕治

2012年05月03日

2012福島県現代詩集(二)記録・証言としての詩

『2012 福島県現代詩集 第33集 ―銀河の声 心の声 ふくしまの声―』
(福島県現代詩人会、2011年4月11日刊)。


 この新しいアンソロジーを読み終えて、私が強く感じ、考えずにはいられなかったのは、記録し証言することと、詩との関係についてです。
 起こったこと、その深刻さに押しつぶされそうになるなかで、言葉の書き手として、できることを、探し考えるとき、まず、何としても言葉で書き留め、伝えようとされた詩人の意思の踏ん張りが、結実した作品です。
 アンソロジー全体のうちで私の心に強く響いた詩のうち、半数以上は、証言、記録としての詩、だと感じました。
 その現れ方は、起きた事柄を時間軸で書く記した言葉から、起きた事柄を考察し考えなおす思索、感情、怒り、悲しみのむきだしの表現と、作者個人により、とても多様です。
 そこに共通して響いているのは、詩人として生きる人としての「真実」を捉えよう、伝えようとする、伝えずにはいられない意思の強さではないかと思いました。

 記録・証言は、映像や写真がよりリアルな力を示し得る領域、言葉ではルポルタージュなど直接的な散文が生きる領域です。
 韻文、歌、寓意、創作に至る前の場です。
 私は表現者の一人として、虚構を、創作を創っていられない、そんな気持ちになれない、より直接的に言葉をはきだすことしかできない、という思いに浸される、そうすることしかできない時がある、そしてそれは真実だし、そのように差し出された、創作・作品に至らない散文の傷だらけの言葉を、受け止めたい、感じとりたい、と考えます。

 私が尊敬してやまない、広島の原爆を経験した、原民喜や峠三吉もまず、そのような、ズタズタの、生の、表現を書きとめました。そうすることしかできなかった、いのちがけで書き留めたのだと、思います。
 今回のアンソロジーの、証言・記録としての言葉も、彼らの思いと重なり通じ合っていると感じます。
 このアンソロジー自体が祈念碑であり、記録・証言です。真実を伝えようという思いがどの作品にも通底して響き続けています。

 以下に私にとって印象的な作品名と詩人名(敬称略)を書きとめます。

「その時―記録椚山二十九番地」 阿曽十喜子。
『広島・長崎・そしてFUKUSHIMA』 五十嵐定幸。
「この世に生きて/初冬の日に」 井戸川茂。
「東日本震災のその後」 大島ミトリ。
「崩れ落ちた安全神話―放射性物質拡散の地 福島から―」 太田隆夫。
「海よ!」 児玉裕治。
「人の声」 小林きく。
「わが鎮魂」 佐々木勝雄。
「大災難」 佐藤一成。
「花も実もある福島」  鈴木美沙。
「東日本・二〇一一」 鈴木みつこ。
「消えてしまった」 鈴木淑子。
「心の古里フクシマ」 須藤成恭。
「花粉」 高坂光憲。
「二〇一一・三・一一(忘れないために)」 高野良一。
「夜が来て朝が来て」 高橋静恵。
「原発事故に憶う」 高原木代子。
「震災と魔物」 滝口吉雄。
「大震災」 竹林征人。
「だまされてはいけない 四倉より思いを込めて」 つちやみつぐ。
「再会 気仙沼」 生江隆。
「わが浪江町」 根本昌幸。
「地震」 福西トモ子。
「原発事故と限界集落」 福米沢悟。
「一本の藁」 藤原菜穂子。
「どんな靴を」 細谷節子。
「「無常(二)」 松坂佳生。
「省略させてはならない」 みうらひろこ。
「山毛欅の森」 三浦洋子。
「彷徨える牛」 室井大和。
「子どもたちのまなざし/新田川の鮭」 若松丈太郎
などです。

 他の作品により強く感じられる読者もきっといると思います。アンソロジーそのものが、多くの方々にお読み頂ける機会がこれからあることを願ってやみません。


☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』は2012年3月11日イーフェニックスから発売されました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。

 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩のコラボをぜひご覧ください。

    こだまのこだま 動画
  
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    Posted by 高畑耕治 at 12:00 │