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高畑耕治
高畑耕治

2013年09月23日

種田山頭火。ころり寝ころべば。自由律俳句(十五)

 自由律俳句を己の人生に重ねた強烈な個性の俳人、種田山頭火(たねだ・さんとうか。明治十五年・1882~年昭和十五年・1940年、山口県生まれ)を前回から見つめています。

 以下、出典から私の心に特に響いた句を選び、似通うものを感じた句にわけました。「☆放浪をうたう(一)(二)(三)」、「♪音楽的な、調べの歌(一)(二)(三)」、「★戦時の句」の7回になります。

 今回は「♪音楽的な、調べの歌(二)」です。一句一句について、◎印の後に私の詩想を記していきます。

 ♪ 音楽的な、調べの歌(二)

  花いばら、ここの土とならうよ

◎「なろうよ」という花への語りかけの口語に、柔らかな心の肉声が聞こえてくるようです。読点「、」の前後で転調があり調べを波うたせています。「花いばらhAnAibArA」までの主調音は明るい母音アA音が呼びかけの心を優しく響かせます。転じて「ここのつちとなろうよkOkOnOtutitOnarOuyO」の主調音は母音オO音でで、穏やかに落ち着いて語りかけてくる口調が聞こえてくるようです。

  笠をぬぎしみじみとぬれ

◎この句は、「ぬぎNUgi」と「NUre」の「ぬ」音が呼び合ってることと子音のN音、「しみじみsIMIjIMI」の母音イI音と子音M音に調べの特徴があります。子音N音と子音M音は、口を閉じ気味に発音する粘性、粘着性、ぬれ、ぬめった感じの音です。この句の雨に濡れる表象と心象を、言葉の音色でかもし出しています。

  お月さまが地蔵さまにお寒くなりました

◎「お月さま」「地蔵さま」「お寒く」「ました」と丁寧語を連ね、「様」を「さま」とひらがな表記することで、童話的な世界を浮かび上がらせています。お月さまと地蔵さまの、二人のまあるい顔が向き合い話す情景を思い浮かべると、「お寒くなりました」という季節にも、心がポッと温まる気がします。
 山頭火がこのように感じ、言葉にしてくれたことを、私は嬉しく思います。

  さて、どちらへ行かう風が吹く

◎読点「、」で表す間(ま)、無音の静止時間が、印象的な句です。「さて」は2音「、」があり「どちらへいこう」は7音「かぜがふく」が5音で、後半は、定型の十七音の場合と同じ7音+5音です。
 間(ま)、無音の静止時間を、何音分続けるかは読者の自由です。心理的な時間なので気持ちの状態で早まりもし、遅くもなります。種田山頭火でさえ読み返す状態によりに「、」の間の時間は、伸び縮んだと私は思います。

  日かげいつか月かげとなり木のかげ

◎作者は「かげ」という言葉を、字形と、音としての両方で、快いと感じて、三回繰り返しています。同音の繰り返しはリズム感も生むので、しつこくさえなければ、快く感じる読者は多いと私は思います。
 また、同じ「かげ」がついて表す表象が、「日」「月」「木」と時間の流れに変化して浮かび上がるのも、印象深く感じる句です。

  ほつかり覚めてまうへの月を感じてゐる

◎「ほっかり」という詩句が印象的なので選びました。月を感じていられる人が詩人だと私は思っています。

  ゆらいで梢もふくらんできたやうな

◎「きたやうな」と続く言葉、例えば、(気がします)を言わずに止めることで余韻が漂っています。「ゆ」音、「ふ」音、「ような」と、柔らかく感じる音が、詩想の情景を点描しているようにも感じられます。

  ころり寝ころべば青空

◎「ころkOrO」の2回の音の繰り返しを快く感じます。「あおぞらあOzOra」にもある母音オO音が主調音で、穏やかな心にさせてくれる好きな句です。

 出典『現代句集 現代日本文学大系95』(1973年、筑摩書房)

 次回は、種田山頭火の句をみつめる「☆放浪をうたう(三)」です。



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    Posted by 高畑耕治 at 19:00 │