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高畑耕治
高畑耕治

2013年09月25日

種田山頭火。ひつそり咲いて。自由律俳句(十六)

 自由律俳句を己の人生に重ねた強烈な個性の俳人、種田山頭火(たねだ・さんとうか。明治十五年・1882~年昭和十五年・1940年、山口県生まれ)を前回から見つめています。

以下、出典から私の心に特に響いた句を選び、似通うものを感じた句にわけました。「☆放浪をうたう(一)(二)(三)」、「♪音楽的な、調べの歌(一)(二)(三)」、「★戦時の句」の7回になります。

今回は「☆放浪をうたう(三)」です。一句一句について、◎印の後に私の詩想を記していきます。

 ☆ 放浪をうたう(三)

  昼寝さめてどちらを見ても山

◎最後の置かれた一語「山」を読んだ瞬間に広がるイメージの広大な世界、緑の山並みのただ中、奥深い山中にひとり、自分も置かれているような気持ちになります。

  あるがまま雑草として芽をふく

◎自然の営み、いのちの不可思議さを、山頭火がどのように受けとめたかを、そのままうたったように感じます。「芽をふく」という生命力のある詩語をえらんだ心に私は共感します。

  ひつそり咲いて散ります

◎前の句と通い合うものがありますが、「散ります」と、静かにつつましく穏やかな語調が、心に沁みます。創作表現すること自体に必ずある「力み」が洗い流されきった、自然体になっているのは、世俗生活を捨て、放浪の旅を歩き続けて初めて得られるもののように私は思います。いいなと心に残る句です。

  春の雪ふる女はまことうつくしい

◎詩歌は、心が高められた、感動であることを教えてくれるような句です。
この句は、春に降る雪のなかに佇んでいた、ひとりの、おそらく見知らぬ、旅での行きずりの、女性を見たときに生まれ出た「ああ美しい」という感動の言葉だと思います。
 その感動、心の高まりは、「まこと」の直後に置、間(ま)、無音、一瞬止まる時、があることでわかります。続く「うつくしい」という言葉は、感動の心のふるえが5音の姿「う」「つ」「く」「し」「い」を借りて流れ出した心そのもののように感じます。

  ひらひら蝶はうたへない

  てふてふもつれつつかげひなた

  ぬれててふてふどこへゆく

◎蝶に共感し、いのち、はかなさをうたった三句。
 一句目は、反語の響きを感じます。同じはかないいのちだけれど、「人だから私はうたえる」という意思の。
 二句目は、情景が鮮やかに浮かびます。光と影、白と黒を、蝶々ふたり、男と女がもつれあい飛んでゆく姿が美しく心を打ちます。
 三句目は、弱い生きものであることでの共感が響いています。濡れてとぶ蝶々のゆくえさだまらず飛ぶ姿に、放浪の旅を一生とした自らを重ね、うたっています。

  ほんのり咲いて水にうつり

◎美しい絵画のような句です。水辺に咲く美しい花、愛する心がやわらかな言葉の歌となって咲いているようです。

  飛んでいつぴき赤蛙

◎「いっぴき」という言葉に、おかしみと共感が込められています。自らの生きざまを、赤蛙に重ねながら、自嘲しているのではなく、励ましあっている心を、私は感じます。

 出典『現代句集 現代日本文学大系95』(1973年、筑摩書房)

 次回は、種田山頭火の句をみつめる「♪音楽的な、調べの歌(三)」です。



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    Posted by 高畑耕治 at 19:00 │