2012年05月24日
田川紀久雄『かなしいから』1詩ってほんとはなんだろ?(四)
標題のテーマ「詩って、ほんとはなんだろ?」について詩集を感じとりながら考えています。
今回と次回は、詩人・田川紀久雄さんの詩集『かなしいから』(2005年9月、漉林書房)です。
田川さんは詩語り、詩の朗読を、1985年から現在まで全国各地で継続して行われてきた方です。詩の朗読、詩の言葉の音楽、言葉の歌について、作品の紹介を織り交ぜながら、私の詩想を記します。
(ホームページの「好きな詩・伝えたい花」でも3篇の詩をご紹介させて頂きました。
☆リンク:詩人・田川紀久雄さんの詩。詩「なみだとにじ」「かなしいから」「ほっきこう」
田川さんが近年ご出版されてこられたご詩集を読ませて頂きました。ひとりの詩人のなかには複数の詩風が混在しています。心の広がりと深さです。ですから作品や詩集により、言葉の表れ方は異なってきます。
田川さんの豊かな詩風のうち、私はこの詩集『かなしいから』の花束にまとめられた詩の花が私の好みであり、一番好きです。
私が好きな、美しくて良いなと感じる花をスケッチすると、こんな風にゆれています。
① 平易な言葉で意味をわかりやすく伝えようとしていること。
② 柔らかな優しい言葉で感情を豊かに表現していること。
③ ひらがなを多く使っていること。
④ 言葉の音楽、歌であること。
今回は、このうちの①②③について、詩集『かなしいから』の詩を引用し、確かめていきます。
① 平易な言葉で意味をわかりやすく伝えようとしていること。
このことは説明しなくても、お読み頂ければどの作品にも感じとって頂けます。私は詩という表現形式にとって、このことはとても大切だと考えています。
平易であり、わかりやすいことは、決して言葉の芸術表現として劣っていることではありません。 たとえば次の詩句と詩連は、この詩人がかなしみの詩人であることと、この詩人の詩が生まれてくる源を、美しい言葉で教えてくれて、私の心は詩句とともにふるえ自然に木魂しだします。
詩「ぽえじーがうまれる」(2連3連)
あいといのりはかなしみからうまれる
もしかなしみというかんじょうがなくなったら
このよにしはうまれてはこないだろう
うたはかぜにのってはこばれてくる
ぽえじーのかえるところは
しんえんのこころのふかさにある
しのいのちはかなしみ
しのいのちはあい
② 柔らかな優しい言葉で感情を豊かに表現していること。
このことにも説明はいらず、どの作品からも感じとれます。
感情がとても豊かだとなぜ感じるのか? 詩という芸術は言葉そのものの表情と肉声です。詩の言葉は、しゃぼんだまのすがたをした心の、ひかりとふるえです。心と切り離せない文学だと私は考えています。
たとえば、詩「ほっきこう」は、静かだけれど、とても深く豊かな感情の響く心の歌です。
☆リンク:詩「ほっきこう」
(2連の詩句)
はねをはばたかせてとびたつとき
このちきゅうのかなしみをぬぐいさるかのように
ゆっくりとちゅうにまいあがる
(3連の詩句)
かりのかなしみは
ひとのかなしみよりふかい
(4連の詩句)
わたしのかなしみは
ちいさないきもののおもさにかなわない
かりがむれをなしてきたのそらへとびたっていく
そのうつくしさにわたしのかなしみはすくわれる
③ ひらがなが多くつかっていること。
言葉の形です。この詩集は、八木重吉のひらがな詩のように、多くの作品がほぼひらがなで書かれています。作者が詩で伝えようとする意味をあらわす言葉をさがしたとき、ひらがのかたちと音の特徴がふさわしいと選んだ形です。
ひらがなは、そのまるみを帯びた字形、曲線に柔らかさと優しさがあります。
そして表音文字であり音そのものです。母音の「あいうえお」をのぞくと、一文字のうちに「かきくけこ」(ka ki ku ke ko)のように子音と母音をくるみ込んでいますが、分析しない限り切り離せず結ばれている音、五十音の姿であらわれる音そのものの文字です。
ひらがなの詩は、一文字一文字読み進めるので文字の音、音のつながり、音の変化が(複数音を隠している漢字に比べて)より強く感じられ、言葉の音楽としての印象が高まります。
(漢字やカタカナにも固有の良さがありますが今回は述べません)。
この詩集全体が、ひらがなの音の、清澄な川のせせらぎのように響き続けていて、美しい音楽を奏でていると私は感じます。
次回はこの詩集の魅力の中心要素である「④ 言葉の音楽、歌であること。」について記します。
今回と次回は、詩人・田川紀久雄さんの詩集『かなしいから』(2005年9月、漉林書房)です。
田川さんは詩語り、詩の朗読を、1985年から現在まで全国各地で継続して行われてきた方です。詩の朗読、詩の言葉の音楽、言葉の歌について、作品の紹介を織り交ぜながら、私の詩想を記します。
(ホームページの「好きな詩・伝えたい花」でも3篇の詩をご紹介させて頂きました。
☆リンク:詩人・田川紀久雄さんの詩。詩「なみだとにじ」「かなしいから」「ほっきこう」
田川さんが近年ご出版されてこられたご詩集を読ませて頂きました。ひとりの詩人のなかには複数の詩風が混在しています。心の広がりと深さです。ですから作品や詩集により、言葉の表れ方は異なってきます。
田川さんの豊かな詩風のうち、私はこの詩集『かなしいから』の花束にまとめられた詩の花が私の好みであり、一番好きです。
私が好きな、美しくて良いなと感じる花をスケッチすると、こんな風にゆれています。
① 平易な言葉で意味をわかりやすく伝えようとしていること。
② 柔らかな優しい言葉で感情を豊かに表現していること。
③ ひらがなを多く使っていること。
④ 言葉の音楽、歌であること。
今回は、このうちの①②③について、詩集『かなしいから』の詩を引用し、確かめていきます。
① 平易な言葉で意味をわかりやすく伝えようとしていること。
このことは説明しなくても、お読み頂ければどの作品にも感じとって頂けます。私は詩という表現形式にとって、このことはとても大切だと考えています。
平易であり、わかりやすいことは、決して言葉の芸術表現として劣っていることではありません。 たとえば次の詩句と詩連は、この詩人がかなしみの詩人であることと、この詩人の詩が生まれてくる源を、美しい言葉で教えてくれて、私の心は詩句とともにふるえ自然に木魂しだします。
詩「ぽえじーがうまれる」(2連3連)
あいといのりはかなしみからうまれる
もしかなしみというかんじょうがなくなったら
このよにしはうまれてはこないだろう
うたはかぜにのってはこばれてくる
ぽえじーのかえるところは
しんえんのこころのふかさにある
しのいのちはかなしみ
しのいのちはあい
② 柔らかな優しい言葉で感情を豊かに表現していること。
このことにも説明はいらず、どの作品からも感じとれます。
感情がとても豊かだとなぜ感じるのか? 詩という芸術は言葉そのものの表情と肉声です。詩の言葉は、しゃぼんだまのすがたをした心の、ひかりとふるえです。心と切り離せない文学だと私は考えています。
たとえば、詩「ほっきこう」は、静かだけれど、とても深く豊かな感情の響く心の歌です。
☆リンク:詩「ほっきこう」
(2連の詩句)
はねをはばたかせてとびたつとき
このちきゅうのかなしみをぬぐいさるかのように
ゆっくりとちゅうにまいあがる
(3連の詩句)
かりのかなしみは
ひとのかなしみよりふかい
(4連の詩句)
わたしのかなしみは
ちいさないきもののおもさにかなわない
かりがむれをなしてきたのそらへとびたっていく
そのうつくしさにわたしのかなしみはすくわれる
③ ひらがなが多くつかっていること。
言葉の形です。この詩集は、八木重吉のひらがな詩のように、多くの作品がほぼひらがなで書かれています。作者が詩で伝えようとする意味をあらわす言葉をさがしたとき、ひらがのかたちと音の特徴がふさわしいと選んだ形です。
ひらがなは、そのまるみを帯びた字形、曲線に柔らかさと優しさがあります。
そして表音文字であり音そのものです。母音の「あいうえお」をのぞくと、一文字のうちに「かきくけこ」(ka ki ku ke ko)のように子音と母音をくるみ込んでいますが、分析しない限り切り離せず結ばれている音、五十音の姿であらわれる音そのものの文字です。
ひらがなの詩は、一文字一文字読み進めるので文字の音、音のつながり、音の変化が(複数音を隠している漢字に比べて)より強く感じられ、言葉の音楽としての印象が高まります。
(漢字やカタカナにも固有の良さがありますが今回は述べません)。
この詩集全体が、ひらがなの音の、清澄な川のせせらぎのように響き続けていて、美しい音楽を奏でていると私は感じます。
次回はこの詩集の魅力の中心要素である「④ 言葉の音楽、歌であること。」について記します。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』は2012年3月11日、イーフェニックスから発売されました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩のコラボをぜひご覧ください。
こだまのこだま 動画
☆ 多こちらの多摩の本屋さんは店頭に咲かせてくださっています。
リブロ吉祥寺店、紀伊国屋書店吉祥寺東急店、オリオン書房ノルテ店、オリオン書房ルミネ店、丸善多摩センター店、くまざわ書店桜ケ丘店、有隣堂新百合ヶ丘エルミロード店など。
☆ 全国の書店でご注文頂けます。
発売案内『こころうた こころ絵ほん』
☆ キズナバコでのネット注文がこちらからできます。
詩集 こころうた こころ絵ほん
☆ Amazonでのネット注文がこちらからできます。
詩集 こころうた こころ絵ほん
『詩集 こころうた こころ絵ほん』は2012年3月11日、イーフェニックスから発売されました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩のコラボをぜひご覧ください。
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☆ 多こちらの多摩の本屋さんは店頭に咲かせてくださっています。
リブロ吉祥寺店、紀伊国屋書店吉祥寺東急店、オリオン書房ノルテ店、オリオン書房ルミネ店、丸善多摩センター店、くまざわ書店桜ケ丘店、有隣堂新百合ヶ丘エルミロード店など。
☆ 全国の書店でご注文頂けます。
発売案内『こころうた こころ絵ほん』
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詩集 こころうた こころ絵ほん
☆ Amazonでのネット注文がこちらからできます。
詩集 こころうた こころ絵ほん
新しい詩「花雨(はなあめ)」、「星音(ほしおと)」、「ことり若葉」をホームページに公開しました。
新しい詩「夕花(ゆうばな)」、「花祭り」をホームページに公開しました。
新しい詩「花身(かしん)」、「香音(かおん)」をホームページに公開しました。
新しい詩「幻色の」をホームページに公開しました。
新しい詩「黄の花と蝶のための楽譜」をホームページに公開しました。
新しい詩「羽の、スミレの旋律のように」をホームページに公開しました。
新しい詩「夕花(ゆうばな)」、「花祭り」をホームページに公開しました。
新しい詩「花身(かしん)」、「香音(かおん)」をホームページに公開しました。
新しい詩「幻色の」をホームページに公開しました。
新しい詩「黄の花と蝶のための楽譜」をホームページに公開しました。
新しい詩「羽の、スミレの旋律のように」をホームページに公開しました。
Posted by 高畑耕治 at 21:51
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