たまりば

本・文芸 本・文芸多摩市 多摩市

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
高畑耕治
高畑耕治

2012年12月28日

崎本恵の詩(一)。野に咲き揺れる、美しい花。

 今回からしばらくは私がとても好きな二人の詩人の詩をみつめ詩想を記します。
まず三回に分けて崎本恵(ペンネーム・神谷恵)の三篇の詩です。彼女は私の詩集『こころうた こころ絵ほん』に言葉を寄せてくださった方で、ペンネームでの著作として、心うたれる詩集『てがみ』小説『家郷』をお持ちです。個人文芸誌『糾う(あざな)』でも珠玉の小説を発表されています。
 この記事の末尾に未刊詩篇をリンクしましたが、今年の秋からご自身のブログ『遠い空へ』で、新しい詩を立て続けに公開され、私はとても嬉しく思っています。
 詩がほんとうに良いもの、心うつものであることと、詩集として出版されているかどうかは、まったく別の事柄だと私は考えています。詩集としてまとめ出版し伝えようとするためには、意思と努力と諸条件が必要で容易なことではないので、実現された詩人に私は詩を愛するものとして共感の思いを抱きます。
けれど、さまざまな要因で詩集にできない、野に咲いている花があることを大切に思います。その美しさを見失わず、見つめたいと願っています。

 彼女の詩は、魂の詩、限りなく祈りに近い言葉です。人の痛み、悲しみの歌。痛み、悲しみに寄り添い、そっと置かれる手のひらのよう。
 彼女の詩は、光の詩、その眩しさは、周りを取り巻く闇の深さと一体となって、魂に射し込みます。
 彼女の詩は、優しさ、いたわり、癒しの詩。強権、不正、虚偽に対しては、それらを守り抜くために、立ち向かう言葉です。
 次の詩は、野に咲く花だけれど、私には見つめずにはいられない言葉です。その揺れている姿が、心に焼きついて、心に種となって宿って、私の心にも芽吹き、咲き、揺れ始め、ずっと揺れていてくれる、そんなふうにとても大切に感じてしまう、美しい詩です。
響きあう木魂を聴きとっていただけたら、嬉しいです。

  あなたへ
           崎本恵


私にはともだちなんかいません
まして 私の存在を喜んでくれるひとなんて

あなたはわたしにそういいました
わたしは一晩泣きながら
そのことばをじっと抱きしめました

神さま
存在を喜ばれないひとを
どうしておつくりになったのです!

そのとき かすかな声が聞こえてきました

耳があったら聴いてごらん
目があったらみつめてごらん
鼻があったら嗅いでごらん
手があったら触ってごらん

いつもあなたは真ん中にいる

健やかなときも
病めるときも
死にいくときも
すべてのものがささやいている
輝いている
香りを放っている
在るものをあらしめている

あなたのために
いてくれてありがとうと伝えるひとがいる
わたしのために
いてくれてありがとうとほほ笑む存在がある

なにも持たない
なにも誇れない
なにも飾れない
それでも いてくれてありがとう
そう祈る声がある

友へ 

わたしのこころを届けたい
声なき声はそう語っていました

大切な 友へ
いてくれてありがとう
それは傷だらけになった
止めどない血と涙をしたたらせる十字架のうえから
あなたへ そしてわたしのために流れくる
父への嘆願
かなしみの祈りでした

出典は、ブログ『遠い空へ』2012年9月27日です。

崎本恵の詩はこちらの私のホームページでも紹介しています。
未刊詩篇から。詩「晩鐘」「芽吹き」「利き手はどっち」

 次回も崎本恵の詩をみつめ、詩想を記します。

 ☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。

 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。

    こだまのこだま 動画
  
 ☆ 全国の書店でご注文頂けます(書店のネット注文でも扱われています)。
    発売案内『こころうた こころ絵ほん』
 ☆ キズナバコでのネット注文がこちらからできます。
    詩集 こころうた こころ絵ほん
 ☆ Amazonでのネット注文がこちらからできます。
    詩集 こころうた こころ絵ほん



  • 同じカテゴリー()の記事画像
    新しい詩「このこ」をホームページに公開しました。
    クリスマスの詩  高畑耕治 詩集「銀河、ふりしきる」P385
    新詩集のカバー画像ができました。
    同じカテゴリー()の記事
     新しい詩「花雨(はなあめ)」、「星音(ほしおと)」、「ことり若葉」をホームページに公開しました。 (2024-04-25 14:32)
     新しい詩「夕花(ゆうばな)」、「花祭り」をホームページに公開しました。 (2024-04-11 19:32)
     新しい詩「花身(かしん)」、「香音(かおん)」をホームページに公開しました。 (2024-03-29 17:02)
     新しい詩「幻色の」をホームページに公開しました。 (2024-03-27 07:32)
     新しい詩「黄の花と蝶のための楽譜」をホームページに公開しました。 (2024-03-15 20:32)
     新しい詩「羽の、スミレの旋律のように」をホームページに公開しました。 (2024-03-02 10:06)

    Posted by 高畑耕治 at 04:05 │