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高畑耕治
高畑耕治

2013年07月02日

古典、明治までの日本語がなぜ読めないのか。変体仮名(一)

 新古今和歌集や、源氏物語、伊勢物語など多くの愛する古典や、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶、夏目漱石の毛筆の直筆に、私は心から親しい気持ちを抱いてきましたが、最近まで読むことができませんでした。でも、前回紹介した次の二冊の本を学ぶだけで読めるようになりました。

 『入門 日本語のくずし字が読める本』(角田恵理子:つのだ・えりこ、2010年、講談社)。
 『実践 日本語のくずし字が読める本』(角田恵理子:つのだ・えりこ、2011年、講談社)。


 古典、明治までの日本語がなぜ読めないのか、ようやくわかりました。
 変体仮名を教わらず、知らす、学ばなかったからです。くずし字であることは毛筆を眺めれば誰でもわかります。また、ひらがな漢字の字体がくずれてできたことも学校で知識として教わり知っています。私もそれ以上は掘り下げ学ばずに、五十音のひらがなは五十の漢字をくずしてできたから、五十文字と思い込んでいました。ですので、五十の良く知っているひらがなが、毛筆で、くずし字で書かれた途端に読めなくなってしまうのが、不思議でした。

 今回上記の本で初めて知ったのですが、五十音のひらがな、たとえばそのうちの「は」の字母(もとの漢字)は「波」で、この形が崩れてこのひらがなになったのは似かよった字形からなんとなくわかります。
 大切なのはこれ字母以外に「は」の変体仮名(くずし字を同じく「は」と読ませる漢字)には、「者」も「八」も「盤」も「半」もあるということです。当然その文字のかたちは違います。

 平安時代から明治時代までの長い間、文字の書き手は、ひらがなの「は」という一音を表すのに、これらの字母が異なるくずし字を、教わり、覚えて、気ままに使い書いていました。
 五十音それぞれに、字母が異なる複数の変体仮名、くずし字があるので、そのことを知り、それらの字体を覚えなければ、古典も、短歌や俳句の短冊も読めるはずがなかったのです。
  
 書き手の好みや癖によって選ばれる変体仮名は違いますし、同じ書き手でも前後の文字との連なり、見た目の美しさや書きやすさで、同じ一音のひらがなを複数のくずし字を用いて、とても気ままに書いています。
 俳句一句、短歌一首のなかでさえ、同じひらがなの一音を、異なる変体仮名を混在させて平気で書いています。私にとっては驚きでした。

 参考に、たとえば次のウィキペディアの記事「変体仮名」で、変体仮名がどのようなものか、いつ、なぜ、学校で教えられなくなったかを、ご覧になれます。

 五十音の一音に一文字のひらがなを当てる1900年(明治33年)以降の教育は、おそらく識字率の向上に寄与したと思います。その反面、文化の断絶を生み、変体仮名を知らない世代は明治以前の文章を原文のままでは読めなくなりました。
 私は変体仮名が用いられていたことは最低限の文化の連続性を把握するための知識として学校で教えたうえで、変体仮名そのものは古典を読もうとする人が自分の意思で学べばよいと思います。

 日本語を用いて表現する者が、日本語をよく知らず、読めないのでは、その文化は根無し草、皮相で、うすっぺらなのではないかと、反省しています。

 次回は、変体仮名をとおして、日本の詩歌を考えます。



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    Posted by 高畑耕治 at 00:05 │