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高畑耕治
高畑耕治

2013年07月28日

山菫。おおばこ。かたばみ。ねじばな。ひなげし。百合。俳句の花(三)。

 花の名を詠んだ俳句を見つめています。出典は、『俳句の花図鑑』(監修:復本一郎、2004年、成美堂出版)です。入門書ですので、花の名にも俳句にも詳しくなくても、美しい写真を眺めながら楽しく読むことができます。俳人は季語として花の名をいつも意識するからでしょうか、季節の移ろいに咲く花の姿をとてもよく知っていて素晴らしいなと、私は素直に感じます。
 初春から夏の終りまで順に、どちらかというと知らない人もいるような花を主に、出典にあげられたさまざまな俳句から私の心に響いた句を選び、いいなと感じたままの詩想を☆印の後に記します。

 今回は、三春、初夏の、花の名を詠み込んだ俳句です。

●三春

  石仏に供養咲せり山菫(せきぶつにくようざきせりやますみれ)  茨木和生

☆道端の石仏に寄せる素朴な信仰心が、可憐なすみれの姿で咲いている優しく美しい句です。
調べでは、子音S音、Z音が、透明感のある澄みかすれる風にそよいでいます。Sekibutu、ZakiSeri、
Sumire。

●初夏

  おほばこの花に日暮れの母のこゑ(おほばこのはなにひぐれのははのこえ)  大嶽青児

☆野原や道端、どこにでもあるオオバコは、日暮れ時まで遊びつづける子どもたちを迎える母の情景によく似合い、懐かしい気持ちがします。調べのうえでは、子音H音、B音の、はかない音が、o(H)oBako、Hana、Higure、HaHaと情景に説けています。「おほばこ」と「こゑ」の「こKO」の音も、遠く呼び合うようです。

  かたばみを見てゐる耳のうつくしき(かたばみをみているみみのうつくしき)  樺山白虹

☆しゃがんで「かたばみ」の花に微笑む女性のうなじと耳の美しい後姿が眼に浮かびます。かたばみの夜閉じる葉と、耳の、曲線の形を美しく重ねています。
 主調音は母音のイI音、特に、「ミMI音」のやわらかさが、葉と耳たぶのやわらかさに溶けて印象深く響きます。katabaMIo MIteIruMIMIno utukusIkI。

  捩花はねぢれて咲いて素直なり(ねじばなはねじれてさいてすなおなり)  青柳志解樹

☆感動をそのまま素直に言葉にした、素朴な、美しい句。「ねじれて」咲く、とても個性的な野の花の姿は、その花そのままでとても「素直なり」と、発見した喜びが込められていて、心に響きます。

  崖の端のひなげし浅間山さやうなら(がけのはのひなげしあさまさようなら)  川崎展宏

☆崖の端に、細い茎でゆれ咲く可憐なひなげしの背景に、立ち去ろうとしている大きな浅間山がオーバーラップして浮かぶ情景の美しい句。結語の「さやうなら」に、花と山を愛する想いが息づいています。
 調べの主調音が母音アA音であることも、明るく開放感のあるイメージと、溶け合っています。gAkenohAno hinAgesiAsAmA sAyounArA。

  百合の蘂みなりんりんとふるひけり(ゆりのしべみなりんりんとふるいけり)  川端茅舎

☆ゆりの大きな花びらから伸びやかに顔をのぞかせるしべ、「りんりん」という音色の詩句で、ゆりの花の姿から、言葉であらわに出していない「鐘」のイメージを、かもし出し、美しくゆれています。「リRI」の音がひそやかに、こだましあっています。yuRI、RInRIn、keRI。心に美しい鐘の音色が響き続けます。

 ■ 出典:『俳句の花図鑑』(監修:復本一郎、2004年、成美堂出版)

 次回も、美しい俳句の花を見つめます。



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