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高畑耕治
高畑耕治

2013年11月05日

ヘルダーリン『ヒュペーリオン』(三)。いまはじめて世界を。

 敬愛するドイツの詩人ヘルダーリン(1770年~1843年)の長編作品『ヒュペーリオン』を見つめています。
 私は二十代で彼の作品にとても感動し、その変わらぬ想いを深め伝えたいとこの文章を書いています。
今回からは、作品の大きな流れのまとまりからテーマを掬い上げ、作品の言葉の飛沫のきらめきと、呼び覚まされた私の詩想を記していきます。

 今回の主題は、です。
 
 愛の告白は、心を打ち心に響きます。なぜでしょうか? ひとりの人の前で、ひとりのひとである自分を、心もからだも裸のままあるがまま謙虚に投げ出す命がけの行為だからだと思います。少なくとも想いのすべて、いのちを込めての。

 ヘルダーリの詩句「そのままのあなたがわたしにはすべてなのです」は、その真実を響かせてやみません。

 次の表現もとても深く愛の経験を捉えていると思います。
「まだ経験したことのないよろこばしい驚き」、
「いまはじめて世界を見たとでもいうかのように。」
 愛する時間に人は、生まれ変わると私も思います。愛しあうふたりの時間の素晴らしさを、これほどよく伝えてくれる言葉はないと思います。

 最後に引用したうちふるえる詩句はとても美しく、わたしのj心も「そうだ」と、木魂を響かせ続けます。

「そうだ、人間は、愛しているときは、いっさいを見る太陽、いっさいを輝かせる太陽だ。」
「愛していなければ、ランプのくすぶる暗い部屋にすぎない。」

● 以下、出典からの引用です。

 わたしにはあなたが、あなたが、あなたのこころの歌が聞こえます。愛しいひと。すべてが光を失って枯れてしまっても、わたしは不死の生(いのち)を見つけることができます

「わたしはいまはじめて、はかない身の乙女以上のものであればよいのにと思います。でも、わたしは、あるがままのわたしでしかありません」
「そのままのあなたがわたしにはすべてなのです」とぼくは叫んだ。

 そのときぼくの存在には裂け目が生じていた。ぼくは死んだ。そして目覚めるとこの世ならぬ乙女の胸にいた。
 おお、愛の生(いのち)よ、おまえはあのひとのもとでなんとゆたかに、なんとやさしく花開いたことだろう。その愛らしい顔は、至福の精霊たちの子守歌を聞きながらかすかにまどろんでいるかのように、ぼくの肩にもたれかかり、その微笑みはあまやかな平和を湛えていた。そしてぼくを見あげるアイテールのように澄んだ目は、まだ経験したことのないよろこばしい驚きを浮かべていた。いまはじめて世界を見たとでもいうかのように。

「わたしを、このわたしをあなたのものにしてください」とぼくは言った。「わたし自身を忘れさせてください。わたしの内なるすべての生(いのち)を、そして精神のすべてをあなたのもとへ飛んで行かせてください。ただあなたのもとへと。至福につつまれ、いつまでもあなたを見つめながら。

いま、わたしはあなたを腕にだき、あなたの胸の息吹を感じ、この目にあなたの目を感じています。目のまえのあなたのうつくしい姿が、わたしの五官に流れこんできます。しかもそれに耐えています。

 そうだ、人間は、愛しているときは、いっさいを見る太陽、いっさいを輝かせる太陽だ。愛していなければ、ランプのくすぶる暗い部屋にすぎない。

だが、いまや、この聖なる素朴そのものであるひとは、打ち明けたのだ。涙ながらに、打ち明けたのだ。とても愛しています、それまでこころを寄せてきたすべてのものに別れを告げました、と。

● 引用終わり。

 今回の最後に、これらの言葉と、木魂しあう私の詩を、ここに響かせます。お読み頂けましたら嬉しいです。

   「こころうた(いち)」(高畑耕治のHP『愛のうたの絵ほん』から)。
   詩「こころうた(さん)」(同上)。

   

 次回もヘルダーリンの『ヒュペーリオン』を見つめ感じとります。

出典:『ヒュペーリオン ギリシャの隠者』ヘルダーリン、青木誠之訳、ちくま文庫


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 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。
絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
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    Posted by 高畑耕治 at 19:00 │