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高畑耕治
高畑耕治

2013年12月31日

愛する。―「愛国」という言葉について。

 「愛する」という言葉は、私にとってとても大切な言葉です。この言葉は、人間であること、人間として生きること、そのように豊かなニュアンスを響かせます。
 この大切な言葉が、「愛国」、「愛国心」と使われるのを目にすると、私は悲しく、不快になっていまします。
 なぜでしょうか?

 「愛国」。わたしにとってこの言葉が意味することを、書くと次のようになります。
 「この東海の島々を故郷に生きている人間ひとりひとりを、受け継がれて来た文化(私の場合は特に文学)を愛することです」。
 わたしが自然に感じるこのような思いを共有しあえる言葉であれば、嫌いなわけがありません。

 けれども、「愛国」、この言葉は多く次のような含意で表現されます。
 「神国日本を愛すること」。不快です。なぜか?

 神道もひとつの歴史観、宗教ですが、宗教は個人の心だけが自ら選ぶものです。特定の歴史観、宗教を、権力・暴力を後ろ盾に押付け従わせること、他の宗教を、他の宗教の信仰者、無信仰者を排斥することは、間違った、良くない、人間を歪める行為だと、私は思います。
(この点についてはジャン・ジャック・ルソーの『エミール』を通して、近日さらに書きたいと思います。

 「国家」を愛するということの、嘘、その押し付けが、不快です。
 「愛すること」、とても人間的な、人間だからこそできる、素晴らしい行為です。人間が愛する対象は、ひとりひとりの人間です。その想いがゆたかに深まり、他の生き物や、自然をも人は愛することができます。
 けれども、「国家」、組織は幻、共同幻想です。実在しない、紙の上に書かれたルール、約束事です。人間がいて、散らばった建物があり、ルール、約束事に合意し従い規則を変えていきながらも、そこにいるのは人間です。
 (吉本隆明の『共同幻想論』の真意はここにあって、いつも彼のことをあまり良く言いませんがこの書と、『言語にとって美とは何か』は独創的でとても優れた本だと思っています)。

  子どもは心が縛られていないので、この地球という星に「国境」という幻の線が、この星の地、海、空に、実際にはひかれてはいないことを知っています。「国境」が見えると信仰していのは猜疑心に蝕まれた「大人」にだけです。
 
 「愛国心」を教育で植えつける、という歪んだ発想も、とても嫌いです。
 心は、鈍感な他人が外から焼印を押しつけると傷つき焦げます。「愛する」ことを強制し、押付けられると思えるような人は、教育を知らず、歪める輩でしかありません。
 誰を愛せ、何を愛せと、命令され強制され従わせようとされて、心に素直な愛する気持ちが、芽をだし育つか?
 人間を馬鹿にしているのではないかと感じます。人を、自分勝手に愛する自由ほど、人間にとって大切なことはありません。
 (ドストエフスキー『地下室の手記』でしつこいくらい繰り返す真実は、「自分勝手」「自由」に自分で行うということが、どれほど人間にとって、生きることの根っこに関わるか、ということです。)

 今回は、不快な思いを書いたので、書きながら不快になりました。読まれた方もそうなられたのなら、ごめんなさい、謝ります。
 汚された心を洗うため、最後に、もういちど、好きな、大切な言葉を。

 「愛する」。
 この星を、宇宙を故郷に生きている人間ひとりひとりを、受け継がれて来た文化を、ともに生きる生き物を、自然を。愛する。

 この星、がんばり、太陽をまた一周しましたね、私たちと。
 あと何周できるかなんて考えずに、運動会でのように一周を、懸命に。
 次の一周に向かって。太陽系の仲間の星たちを、宇宙の底深さを感じながら。


  次回は、読書や考える日にちを少し持たせて頂いたあと、1月11日頃とする予定です。


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 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。
絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
    こだまのこだま 動画  



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    Posted by 高畑耕治 at 12:20 │